ジルコニアはZrO2の金属酸化物で、歯科のセラミックスとして、イットリウム部分安定化ジルコニア結晶として使われる。
Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、V(バナジウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Bi(ビスマス)、La(ランタン)及びCe(セリウム)からなる群より選択される金属原子
「セラミックス」とは、基本成分が金属酸化物を高温で熱処理することによって焼き固めた物質。 硬度が高くて耐熱性をもちながら金属より軽い物質が多く、多くの工業製品に利用されている。 とありました。
セラミックの定義は国によって様々ですが、最も広い定義で、「無機、固体、非金属」です。
非金属が定義に入っているので、金属の中にセラミックと呼べるものはいっさいありません。
金属酸化物では金属と酸素が結合していますが、この結合は共有結合とイオン結合からなります。金属結合でなく自由電子を持たないので、例えばセラミックは電気を通しにくいものがほとんどです。
安定化ジルコニア(stabilized zirconia)で、安定化されているものは金属ではありません。ジルコニア中に意図的に混入させた金属「が」(母材の)ジルコニア「を」安定化させているのですが、その点はよいでしょうか。ご質問のタイトルに「金属による安定化」でなく「金属の安定化」とありましたのでちょっと気になりまして。
ジルコニア(ZrO2)はセラミックスの一種で、化学式で明らかなようにジルコニウムの酸化物です。構造部材のほか酸素センサーにも使われています。
ジルコニアは温度によってその結晶構造が変化します。専門的な言葉で言えば単斜晶、正方晶、立方晶の3種の構造相互間で変わります。ところがこの構造変化は無視し難い体積変化を伴うので、温度を上げたり下げたりを繰り返すとジルコニア部材は最後はボロボロになってしまいます。
そこで、温度が変化してもこの構造変化が起こらないようにする方法が研究され、その結果考え出されたのが「安定化」と呼ばれるプロセスです。具体的にはジルコニア中にイットリウム、セリウム、カルシウム、マグネシウムなどの元素(安定化剤)を数%(モル比)加えます。こうすると温度が変化しても結晶構造が変化しなくなり、温度を上げ下げしても体積変化が起こらず、安定してジルコニア部材を使うことができます。
繰り返しになりますが、これらイットリウムやカルシウムがジルコニア「を」安定化させているのであって、イットリウムやカルシウムがジルコニア「によって」安定化されているのではありません。
安定化ジルコニアについては以上のことを知れば取りあえず十分だと思いますが、参考までに「完全安定化ジルコニア」と「部分安定化ジルコニア」の違いについて説明しておきます。
完全安定化ジルコニアは十分な量の安定化剤を加えて、結晶構造変化をほぼ完全に抑制している材料です。これに対して部分安定化ジルコニアは安定化剤の量を減らして、一部結晶構造変化が起きるようにしている材料です。
ここまで説明しますと「構造変化が起きない方がよいではないか、ならなぜ部分安定化ジルコニアなどというものが存在するのか」という疑問が出てくると思います。これは次のように説明されます。
材料の特性の一つに「靱牲」(toughness)と呼ばれるものがあります。これは「粘り強さ」などと説明されます。例えば金属などは、ちょっと傷を入れてそこから折ろうとしてもそう簡単には折れません。金属は「靱牲の高い」材料ということになります。これに対しセラミックスは通常、傷を入れて力をかけると、そこから簡単に折れてしまいます。セラミックスの靱牲は金属に比べ、一般に低いものです。(強度とは違った概念ですからご注意ください。破壊が一気に進行するのかゆっくり進行するのか、ということです)
とは言え金属よりセラミックスが適した部品というものもあるわけで、ならば同じセラミックスでも靱牲をなるべく高めて使いたいというのは当然の発想です。その一つが以下に述べる、応力誘起変態による強靱化です。
セラミックスの破壊は通常、き裂が材料中を進行することで起こります。き裂の先端では応力の集中が起こるため、一度き裂が生じるとさらにき裂は進みやすくなります。
ところが部分安定化ジルコニアの場合、き裂先端にかかった応力のため、き裂先端の近傍の領域で正方晶から単斜晶への構造変化が起こります。この際に体積膨張が生じ、き裂を閉じようとする方向に力が働くのでき裂は進みにくくなります。つまり靱牲が向上することになります。
完全安定化ジルコニアではまったく構造変化が起こりませんので応力誘起変態による強靱化効果は得られません。また安定化しないジルコニアではそもそも、冒頭で述べたように構造変化とそれによる体積変化が激しくて構造材料としての使用に堪えられません。
一部だけ構造変化の余地を残した部分安定化ジルコニアのみで、この強靱化効果が発揮されるというわけです。
後半は申し訳ないのですが質問の趣旨がよく分かりません。例えば「他の金属では見られないのか」の目的語はなんでしょうか。また「遷移金属、典型元素(非・金属)の強度」というのは、その元素から構成される部材の強度と、それらの元素を添加したジルコニア材の強度とどちらを意図されているのでしょうか。前者だとしたら私の知識ではとても説明し切れないところです。後者であれば、そこまで幅広く添加元素の探索を行った報告はちょっと聞いたことがないです。
ジルコニアはセラミックスの世界では有名な材料ですから、セラミックスの入門書を読めば必ず載っています。元素添加による安定化や、応力誘起変態による靱牲向上についても触れられていることでしょう。
[1] オンライン百科事典"Wikipedia"
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%AB% …
[2] 原子力百科事典"Atomica"
酸化タングステン粉末を水素雰囲気炉で還元しタングステンを
得る様に簡単には行かないと思います。(温度800-1200K)
ジルコニウムZrの製造法の一つは、
鉱石の化学処理から出発してジルコニアZrO2を得ます。
そのZrO2を塩素置換してZrCl4にします。
それを金属Mgで還元して得ます(クロール法)。
またはフッ化ジルコニウムの溶融塩電解です。
酸化タングステンの様にH2で容易に還元されるなら、
ハロゲン置換というような回り道は取らないと思います。
ジルコニアは二酸化ジルコニウムのことで、その化学式はZrO2です。常態では白色の固体です。左の写真がジルコニアの結晶です。そしてジルコニアはセラミックスです。融点が2680℃と高いため、耐熱性セラミックス材料として利用されている。また、透明でダイヤモンドに近い高い屈折率を有することから模造ダイヤとも呼ばれ、宝飾品としても用いられています。
ジルコニアにも幾つかの種類があります。その中で山本歯科医院ではセルコンを採用しています。ここではセルコンについて具体的な特徴をご説明します。
まず第一に、セルコンもセラミックスですから、天然歯のような優れた審美性、透明性を発揮できます。また、為害作用が無く高い生体親和性を有します。特に金属アレルギーの患者様にも有効です。それに非金属ですから金属イオンが溶け出す事による歯肉の黒変などは起こりません。
セルコンの曲げ強度は900MPaを有します。これは金属に匹敵する強度です。ISO規格によると3歯のセラミックスブリッチの曲げ強度は最低500MPa、そして4歯のブリッチの曲げ強度は最低800MPaです。(ちなみにステンレス(SUS304)の曲げ強度は250MPa)
曲げ強度だけでは強さを証明するには不十分です。もう一つ破壊靭性について触れたいと思います。ISO規格によると3歯のセラミックスブリッチの破壊靭性は最低3.5、そして4歯のブリッチの破壊靭性は最低5.0です。(ちなみにステンレス(SUS304)の破壊靭性は210です。)
そしてセルコンの破壊靭性の値は9.5です。破壊靭性および曲げ強度はISO規格において、臼歯部の3歯および4歯のブリッチにも耐えられる強度があると言えます。それに試適や仮着することも可能になりました。
無事ヘイゼルナッツの実を取り出すことに成功しました。セルコンのブリッチなら、ナッツの実を歯で取り出すことも可能です。でも、個人的な意見としてはマネしない方がいいと思います。
純チタンと比較して酸化ジルコニウムは細菌の付着量が少なく、審美性だけではなく生体親和性にも優れています。比較した純チタンは歯科ではインプラントの素材としても広く使われています。
酸化ジルコニウムに酸化イットリウムを混ぜていることもセルコンの特徴です。酸化イットリウムが添加剤として含まれることにより単体での酸化ジルコニウムよりも酸化ジルコニウムの結晶構造が安定します。それにより強度と靭性(じんせい)が増します。靱性が増すとジルコニアに粘り強さがでます。それによりセラミックスの欠点の一つが改善されます。
さらに酸化イットリウムの含有量も酸化ジルコニウムの性質を左右します。何も混ぜないと結晶の構造が不安定であり、酸化イットリウムを多く混ぜると結晶構造が安定し今度は結晶構造が変態しなくなります。安定化ジルコニウムといいます。
今度は添加剤である、酸化イットリウムの含有量を減らすし、結晶構造をわずかに変態出来るようにしたものを部分安定化ジルコニウムといいます。そして部分安定化ジルコニウムがセルコンです。ジルコニウムは下図の結晶構造が変化します。そのことを結晶構造の変態と呼びます。
部分安定化ジルコニアは、破壊の原因となる亀裂の伝搬を、正方晶から単斜晶への相変態により阻害し、亀裂先端の応力集中を緩和するため、強度や靭性等の機械的特性に優れている。
この得意なメカニズムを「応力誘起相変態強化機構」といい、最大で正方晶の約40%が単斜晶に変態する。これにより衝撃をジルコニア自体が吸収し、破折しにくくなります。
- ジルコニアだけが持つセルフヒーリング効果による長期安定性
- 非金属(メタルフリー)であるセラミックスであるため、生体親和性に優れている
- セラミックであるジルコニアならではの審美性
- 全世界ですでに250万症例を越える臨床実績による安全性
ジルコニウムは人工ダイヤモンドとしても利用されていますが、その他の色々な分野でも活躍しています。スペースシャトルの耐熱版としてもジルコニウムは利用されています。(写真上側)また、高い生体親和性と強度を生かして人工の関節の素材としても利用されています。(写真下側)
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