水俣病終わらずと坂本さん 水銀規制の必要性強調 条約会議スイスで開幕

 【ジュネーブ共同】8月に発効した「水銀に関する水俣条約」の第1回締約国会議が24日、スイス・ジュネーブで開会しました。熊本県水俣市の胎児性水俣病患者の坂本(さかもと)しのぶさんが非政府組織(NGO)代表として演説、「水俣病は終わっていない」と訴えました。また「女性や子どもを水銀から守らねばならない」と述べ、人体に有害な水銀規制の必要性を強く訴えました。

 会議を主催する国連環境計画(UNEP)高官は演説で坂本さんを紹介、「彼らはもはや1人ではない」と述べると大きな拍手が湧きました。

 UNEPは、世界の小規模な金採掘場で推計1500万人が精製に使う水銀にさらされていると警告、参加各国に条約履行と規制強化への議論を求めました。会議には日本をはじめ、米国、中国など150以上の国・地域が参加し、29日までの会期中、水銀による環境汚染や健康被害の防止について議論します。

 28~29日の閣僚級会合では80カ国以上の代表が演説の見通し。小規模な金採掘場での水銀被害が深刻な南米ガイアナの大統領が実情を報告します。

 UNEPによると、水銀による環境汚染は、小規模な金採掘場と石炭火力発電所が二大要因となっています。うち金採掘場はアジア、アフリカ、中南米など70カ国以上で推計1500万人の作業員と家族に健康被害のリスクがあるといいます。

 会議では条約履行のための規則制定のほか、水銀の輸出禁止措置や汚染対策の指針作成なども議論される見通しです。

 28日の公式プログラム「水俣への思いをささげる時間」では坂本さんや西田弘志(にしだ・ひろし)水俣市長、環境省親善大使の高校生らがスピーチします。

 条約の加盟国・地域は日本、米国、中国、欧州連合(EU)など計79ですが、それ以外の国も出席できます。

 ※水銀に関する水俣条約

 水銀と水銀化合物による環境汚染や健康被害の防止を目指す国際条約。前文で水俣病の教訓に言及、同様の被害を将来発生させないとしています。鉱山での水銀産出から輸出入、使用、廃棄までを包括的に規制しており、具体的には、水銀を含む体温計や電池などの製造、輸出入を2020年までに原則禁止することなどを定めています。13年10月に熊本市で開かれた国際会議で採択され、日本は16年2月に締結。今年8月16日に発効しました。

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